中国国内で大ヒットとなっている中国国産アニメーション映画「哪吒之魔童閙海(ナーザの魔童大暴れ)」。2月18日時点で、その興行収入はすでに122.5億元(1元は約20.9円、前売りと海外の興行収入含む)の大台を突破した。
ある映画専門プラットフォームの最新の予測によると、「哪吒之魔童閙海」の興行収入は最終的に160億元を超えるとみられ、単一市場における世界歴代興行収入ランキングで「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を超え、世界の歴代映画興収ランキングでトップ5に入り、同ジャンルの興行収入の限界を突破し、英語以外の映画としては初めて同ランキングでトップ10入りした作品となる見通しだ。
歴史を塗り替え続ける「哪吒之魔童閙海」の大ヒットで、「メイドイン成都」にもスポットが当たるようになっている。
アニメ制作のベースとなる脚本を手掛けた「成都可可豆動画影視有限公司」は四川省成都市の企業で、餃子(Jokelate)監督も四川省出身。エンドロールに流れる中国の技術チーム138チームのうち、視覚効果を担当した「墨境天合」、特殊効果を担当した「炬煋文化」、初期のアニメ美術を担当した「画心科技」、3Dシーンレンダリングに関わった「艾爾平方」、キャラクターのアフレコに関わった「声娯文化」なども成都の企業だ。
5年かけて制作され、社会現象を巻き起こしている「哪吒之魔童閙海」が成都で生まれたのはなぜなのだろうか?
その答えは、成都の産業チェーンと文化的背景、革新的なエコシステムに隠されている。
2005年、初の国家オンラインゲームアニメ産業発展拠点が、成都ハイテクパークで設立された。
2022年、成都は、全国に先駆けてデジタル文化クリエイティブ産業発展「第14次五カ年計画(2021‐25年)」を発表。デジタル文化クリエイティブの重要拠点を作り上げることを目標に掲げた。
デジタル文化クリエイティブ産業チェーンが日に日に整備され、車で10分で移動できる範囲に1千億元級規模の産業クラスターがすでに構築されている。
「成都可可豆動画影視有限公司」が入居している天府長嶋デジタル文化クリエイティブパークは、ゲーム・エレクトロニック・スポーツ(eスポーツ)、映画・ドラマ・メディア、デジタルミュージック、超高画質動画といった分野をカバーし、騰訊(テンセント)、抖音(中国版TikTok)、西山居、咪咕音楽を含むデジタル文化クリエイティブ関連企業6000社以上が集まっている。「哪吒之魔童閙海」の特殊効果を担当した「墨境天合」と「成都可可豆動画影視有限公司」のオフィスはわずか100メートルほどしか離れていない。
このように、成都ではハイレベルなアニメ人材が着々と育成され、集まっている。
中国西部の重要な経済の中心地である成都は、2024年のGDPが 2兆3511億3000万元に達し、中国の都市で7位だった。うち、サービス業の経済成長に対する貢献率は 70.5%に達した。
発展した経済、比較的安い生活費、住みやすい環境などが魅力の成都には、北京や上海、広州、深センなどから人材が移って来ており、そこで奮闘する若者たちがクリエイティブコミュニティを形成している。また、四川大学や電子科技大学といった大学が、デジタル文化クリエイティブ関連の学科を開設し、専門人材を育成し、中国国産アニメの人材プールを構築している。