《
ボヘミアの醜聞
》16
「どこかだな、確かに?」
「自分で持ち歩いているというのは最も考えにくい。写真はキャビネ版だ。女の服に簡単に隠せるような大きさじゃない。彼女は王様が待ち伏せして探すようなことをしかねないと承知している。そのたぐいの企てはすでに2回なされている。だからこう考えられる、 それなら、 彼女はそれを持ち歩いてはいない」
「それならどこだ?」
「銀行員か弁護士。二つの可能性がある。だが僕はどちらも無いという気持ちに傾いている。女は基本的に秘密主義だ、 そして自分で秘密を処理したがる。どうして他人の手に渡そうとするだろうか?、 彼女は自分の保護は信用できるだろう、 だが彼女は相談できない、 間接的、政治的影響が加えられるかもしれない職業人に。それにだ、彼女が数日内に使うと決心していたことを忘れてはならない。写真は彼女が何時でも手の届くところになければならない。それは必ず自宅にある」
「しかし2回も荒らされているのに」
「ハ、探し方を知らなかったのだ」
「しかし君はどう探すつもりだ?」
「探すつもりはないね」
「じゃあどうやって?」
「彼女に教えてもらおうと思っている」
「しかし断るだろう」
「拒絶できないね。あ、車輪の音が聞こえる。彼女の馬車だ。さあ僕の指令を忠実に実行してくれ」
彼が話していると、 馬車のサイドライトの輝きが、 通りの曲がり角に現れた。それは高級な小型ランドー馬車だった、 ガラガラと音をたててブライアニ・ロッジの戸口に来た。馬車が止まった時、 隅にいた一人の浮浪者が、飛び出して扉を開けようとした、 小銭をせびろうと思って、 しかし別の浮浪者に肘で押された、 同じ目的で急いでいた。激しい口論が始まった、 二人の衛兵が加わった、 彼らは片方の浮浪者の肩をもち、 そしてハサミ研ぎ職人は、 反対側について同じくらいカッカしていた。誰かが一発殴られた、 次の瞬間、 馬車から折りた彼女は、 真中にいた、 顔を真っ赤にして格闘している男達の密集した集団の、 拳やステッキで乱暴にお互いを殴りあっている。ホームズは彼女をかばうために群集の中に突進した、 しかし、彼女の側に行くと同時に彼は悲鳴をあげ、 地面に倒れた、 彼の顔を血が大量に流れ落ちた。ホームズが倒れるや衛兵は、 ある方向に急いで逃げ、 浮浪者は別の方向に逃げた、 沢山の小ましな格好をした人々は、