《
ボヘミアの醜聞
》17
「いや、まだ生きてる」、 別の人間が叫んだ。「しかし病院に行くまで持たんな」
「勇敢な人です」、 一人の女性が言った。「彼らはあの夫人の財布と時計を盗んだでしょう、 もし彼がいなかったら。彼らは悪党とごろつきです。あ、息をしている」
「道に寝かせておいてはいけない。お部屋に運ばせてもらえないですか、奥様?」
「もちろん。居間に運んで下さい。すわり心地のよいソファーがあります。こちらへどうぞ!」
ゆっくりと重々しく彼はブライアニ・ロッジに運び込まれ、 広間に寝かされた、 私がじっと状況を窓の横の持ち場から観察している間に。ランプには灯がともされていた、 しかしブラインドは下ろされていなかった、 だから私はホームズが長椅子に寝かされているのを見ることが出来た。彼がやましい気持ちに襲われたかは分からない、この瞬間、 彼が演じている役に対して、 だが私はこれほど心から自分を恥じたことはなかった、 私の人生で、 私が片棒を担いで騙そうとしている美しい女性を見たときほど、 彼女が傷ついた男を世話をする優雅さと親切さを目撃した時ほど。しかし、 それはホームズに対するこの上ない裏切りだ、 彼が私に託した役目から手を引くのは。私は心を鬼にし、 発煙筒を外套の中から取り出した。最終的には、 私は考えた、 我々は彼女を傷つけようとしているのではない。換わりに我々は彼女が別の人間を傷つけるのを止めようとしているのだ
ホームズは長椅子に腰掛けていた、 そして私が見ていると、彼は息苦しいようなしぐさをした。。メイドが駆け寄って窓をさっと開いた。同時に彼が手を上げるのが見えた。、 その合図で私は筒を部屋に投げ入れ、 「火事だ!」と叫んだ、 その声が私の口から出るや否や、 見物の群集全員が、 身なりのよい男性、だらしない男性、 馬丁、 使用人にメイドが - 揃って、 一斉に「火事だ!」と叫んだ、 もくもくと煙が渦を巻いて部屋を走り、 窓から出てきた。駆け出す人影が見えた、 直後にホームズの声が中から聞こえた、 これは間違いだったと彼らに確信させる。叫んでいる群衆をすり抜け、 通りの角まで行った、 10分後私は喜び勇んで、 ホームズと手を組み、 喧騒の現場から離れた。彼は黙ったまま早足で何分間か歩いた、 我々が曲がって静かな通りに出るまで、 エッジウェア通りに向かう